Interview

スペシャルインタビュー 杏橋幹彦さん

杏橋幹彦さん スペシャルインタビュー フォトグラファー

写真家としてご活躍されている杏橋幹彦さん。波の裏側から海を撮影する、杏橋さん特有の幻想的な写真が反響を集め、写真展は常に盛況を博す人気ぶり。今回はリニューアルしたばかりの杏橋さんのギャラリーを訪問し、様々なお話を伺いました。

- まずは読者の方のために、現在のご活動内容について教えていただけますか?

わかりやすく言うと、「波の中を撮る。波の裏側を泳いで撮る」です。そうして撮った写真を国内外で展示して販売したり、海の物語を執筆したり、講演でお話ししたりしています。

波って、来る前に撮るんです。波が来るのはものすごく速いので、感覚的に見ていたらその瞬間は行ってしまいます。ですので、目で見て感覚で押すということを覚えました。海を撮り始めてから人も撮るようになりました。

人の表情も最高の表情って一瞬だったりするんですが、そういう感覚が感じられるようになったんです。人もオリジナリティが出るので、撮ってる方も楽しいし、喜ばれるので最近は人も撮っています。また、「FIRE KING CAFÉ」で毎年新作を展示したりしています。

- 数多くの職業の中から、写真家になろうと思ったきっかけは何でしょうか?

杏橋幹彦さん スペシャルインタビュー フォトグラファー

小さい頃、家中に魚の水槽があったんです。いつも水の音がして、魚を見て育ったんですね。父や祖父が山や海が好きで、よく連れて行ってもらいました。父がカメラ好きだったこともあり、家には常にカメラがありました。あるとき急に「撮ってみたら?」とカメラを渡されて。それがきっかけで火がついたように撮り始めました。

二十歳くらいの頃に、海の学校に行って色々なことを勉強をしましたが、僕の写真には何かが足りないと感じ、道に迷いました。

そんなとき、昔パラオに3日間だけホームステイした先のホストが亡くなったことを知りました。命は儚いし、僕も命がけで何かをやろうと思ったんです。それは何だろうと考えたときに、きっと波の中じゃないかなと閃いたんです。

- フィジーでの撮影が多いようですが、フィジーにはどんな魅力がありますか?

杏橋幹彦さん スペシャルインタビュー フォトグラファー

最初は、フィジーの離島に行ったのが始まりです。フィジーは「美しい」と「怖い」が共存する場所。大昔のままの地球に寄り添って生きている人たちが多く、汚されたものが何もないと感じるんです。とにかく海は透明だし、神秘的。村の人たちも優しくて、「楽園」という言葉がふさわしい美しい場所だと思います。

ただ海は自然なので怖いのも事実。その大きなフィジーの海に育てられたと僕は思っているんです。

- 波の裏側から撮影された写真は本当に幻想的で、ぜひたくさんの方にご覧になっていただきたいと思います。撮影にはどんな心構えで臨まれているのでしょうか?

杏橋幹彦さん スペシャルインタビュー フォトグラファー

自分に正直に。行けると思ったら行く、行けないと思ったら引く。海って人間の人為や思惑とはかけ離れているんですよ。山だったら休憩もできるけど、海の中では泳ぎっぱなしで状況も刻々と変わります。危ない生き物もたくさんいます。

とにかく海では冷静でいなくてはいけないし、ここで写真を撮るというポジションまでなかなか行くことが出来ません。身も心も嘘があったらやられてしまうので、生身で無になって入っていくんです。装備は水中眼鏡とフィン、それにカメラだけ。身も心も磨ぎ澄んでないといけないんです。

入って5分でいやな感じがするときはすぐに帰ってくる。いい海なんだけどいやな感じがするときってあるから。人間は美しさと怖さを持つ地球本来の姿を知るべきだし、今の時代は便利すぎて大事にすることを忘れがちだと思うんです。

自然の怖さを知ると、ゴミなんて捨てようと思わないし、怖さを知らないから大事にしなくなる。地球の美しさと同時に、持ってる怖さは人間にはすごく大事なことだって思うんです。

- では、次にプライベートについて少し教えてください。休日はどのように過ごされていますか?

休みってないんですよ。(笑) 現像出して、撮影して、旅の準備をして、展示会の案内を作って、と常に何かすることがあるから。何かしらやってますよ。

希望を言えば、もっと海の近くにいて海の音を聞いたり、海と触れ合う時間を増やしたい。だけど都会に住んでいることも意味があるんですよね。都会にいないとそういうことを伝えられないし、展示会だって大自然の中にいたらしようとは思わないかもしれません。(笑)

- 杏橋さんが幸せを感じる瞬間は、どんな瞬間でしょうか?

杏橋幹彦さん スペシャルインタビュー フォトグラファー

この地球の中で一人で大海原に包まれて波を抜けたときなんて、なんとも言えない感覚に幸せな気持ちになりますよ。僕は水の中が大好きなんです。

- フィジーウォーターを飲んでいただいてありがとうございます。フィジーウォーターを飲まれていていかがでしょうか?

スッと身体に入る水ですよね。フィジーにいたときはこれしか飲んでいませんでした。

もともと海の水が山に入ってろ過された水がまた自分の体で巡回され、そしてまた自分が海に入っていく。フィジーウォーターが波の避け方や身の守り方を教えてくれるんじゃないかと思ってましたよ。(笑)

このお水が今、都会で売っているなんて不思議ですね。

- 好きな言葉/格言を教えてください。

杏橋幹彦さん スペシャルインタビュー フォトグラファー

「必死即生」。死ぬつもりで思い切って臨めば、心も体も正しく動く。「無生法忍」。一切は空であり、心に囚われのない鏡のような水面の澄みきった境地にいたること。

波の中ではこの言葉をよく思い出しますね。どうしても波と絡んで生きてきているから、波の中の思いとか波と自分と心を考えると、自然とこのような言葉が思い浮かびますね。

- 最後に、今後新しくチャレンジしていきたいことをぜひ教えてください。

これからも今の活動を続けることはもちろん、写真を通じて色々なことを伝えたり喋ったりしたいですね。写真一枚でも何か感じることはあると思います。また、子供たちに海での対処法を広めていったり、命を守るという活動もしていきたいです。

杏橋幹彦さんプロフィール
1969年、神奈川県茅ヶ崎の海の近くで生まれ育ち、5歳から真鶴や山口県の無人島で水中メガネで遊び始める。1992年に東オーストラリア移住後、バリ島など南の島々をダイビングで巡る旅をし、やがて片手にカメラを握りしめ、息の続くかぎり足ヒレと水中メガネだけで波の裏側へ向かう。今年(2019年)で波の裏側の撮影は15年目を迎えた。

※インタビュー内容はすべて個人の感想です。